①研究の背景
2020年1月15日に初めて日本で感染者が確認された新型コロナウイルスですが、最近は感染者数の増加も緩やかになってきています。しかし、いつまた爆発的に感染者数が増加してもおかしくありません。
そこで、「マスクの種類ごとに感染者数の増加をシミュレートし、グラフにしてわかりやすく示すことで、感染予防への意識を高められないか」と思い、このようなテーマで研究していくこととなりました。
②仮説とねらい
今回のシミュレーションでは、「マスクなし」「ウレタンマスク」「不織布マスク」の三つの場合をシミュレーションしていきます。いうまでもなく、マスクを着けなかった場合に、感染者が爆発的に増加することは容易に想像できます。では、ウレタンと不織布の場合はどうなるでしょうか?一般的には不織布マスクが推奨されていますが、ウレタンマスクではダメなのでしょうか?今回の研究で明らかにしていきたいと思います。
③研究内容
シミュレーションをする際に用いる方程式(感染症数理モデル)には、SIモデル、SIRモデル、SEIRモデルなど、ほかにも複数種類が在ります。今回の研究では、SEIRモデルを使ってシミュレーションをおこなっていきます。
SEIRモデルというのは、感染症に対して免疫を持たないもの(Susceptible)、感染症が潜伏期間の者(Exposed)、発症(Infectious)、感染症から回復し免疫を獲得したもの(Recovered)の四種類の状態の人を考慮してシミュレーションできるモデルのことです。
そして、感染症の増減をSEIRモデルでグラフにするには、感染者一人が何人に感染させるかを示す値である、R0(基本再生産数)を求める必要があります。R0に関しては下の図がわかりやすいと思います。
④技術的知識
求めた三種類のR0,シミュレートする人口、初期の感染者数等を、北海道大学大学院が公開しているモデル(https://biostat-hokudai.jp/seirmodel/)に入力し、シミュレートします。
上のグラフは、マスク未着用時のものです。十日目には100人、二十日目には1000人を突破しています。
上のグラフは、ウレタンマスクをつけた場合のものです。先程と比べれば増加は緩やかですが、十五日目には100人を突破、その五日後には倍に増えています。
最後に不織布マスクです。この場合、二十日後ですら50人までしか増加していません。先の二つの場合と比べると圧倒的に緩やかです。
これらの結果から、不織布マスクのほうが感染予防の効果が高いということがわかってもらえたと思います。
⑤これからの取組
本来なら、SEIRモデルをすべて自分たちで作り、それに値を入力してグラフを作れるようにしたかったのですが、一から自分たちで作るとなると、大学数学の知識が必要になってしまい作ることができず断念しました。
また、SEIRモデルよりも複雑ですが、よりリアルで視覚的にわかりやすいシミュレーションを行えるMASモデルというものもあります。今後は、このMASモデルでシミュレーションをしていきたいと思っています。
⑥まとめ
今回マスク種別に感染者数の増減をグラフにしたことで「ウレタンマスクはデザイン性に優れてはいるが、マスクとしてはあまり有能ではない」ということがわかりました。
マスク着用の必要性は皆理解していることと思います。そのうえでマスクの種類にも配慮することで、感染者数を減少させ、コロナウイルスが流行し始める前の日常が再び訪れる日が近ずくかもしれません。