①テーマ

「電車待ちだけじゃない みんなで使う まちの待合所」

名古屋鉄道蒲郡線の西浦駅は、1936年に開業しました。学生や高齢者をはじめとした地域住民だけでなく、観光地西浦温泉を訪れる観光客も利用する西浦の玄関口です。そこには待合所を併設した駅舎が設置され、多くの方に利用されてきました。どことなくホッとするような佇まいの駅舎は、いつまでも懐かしい、いつまでも愛される存在でありました。しかし、昭和 24 年に改築された駅舎は施設の老朽化のために取り壊されることになり、令和4年秋、多くの人に惜しまれながら 73 年間の長い歴史に幕を閉じました。
このまちに住む人は、西浦駅を通って時代を過ごしてきました。かつての駅舎が取り壊されてしまった今、西浦駅は待合所を必要としています。いつまでもありつづけて欲しいと願うまちの思い。思いを乗せた提案を求めます。

②社会背景

地方都市における観光客の低減、伝統文化の継承、地域の衰退が大きな問題となっている。笹間らの研究1では、良好な景観が地域にもたらす効果を述べている。しかしながらこの研究ではランドマークとなる建物の意義について明らかになっていない。そこで本研究では、地域に沿いながらもランドマークとなる象徴的な建築の意義について研究する。それにより導かれる西浦の玄関口に西浦らしさを表現したシンボリックな待合所を提案する。

③仮説とねらい

地方都市における建築的ランドマークの形成は、まちづくりや観光振興において重要な要素となるだろう。地域に沿いながらもランドマークとなる象徴的な建築をすることで、観光客の集客や地域の認知度向上などの効果を見込めると考えている。

④研究内容

1.研究項目  ランドマークとなる建築の意義について以下の観点から研究する。

①建物の外観的要素による効果。

②建物の機能的要素による効果。

2.研究方法

①建築科3年の生徒を対象にランドマークに関するアンケートを実施し、分析する。

②西浦市民の要望を調査する。

③提案を考える。

3.研究結果

アンケート結果を分析したところ、以下の効果が確認された。

外観的要素 →→ 地域の気候や風景に合わせた適切な勾配を持つ屋根は、建物が自然環境に溶け込む効果や、バランスの取れた外観を形成する効果がある。

機能的要素 →→ 人々の集合場所として機能することで人々の交流を促す効果がある。 ・多くの店舗が集まり、買い物や娯楽のニーズを満たす効果がある。

蒲郡市の都市計画マスタープランから西浦市民の要望として以下の点が挙げられる。

・地域住民は、公園や緑地といった屋外空間でゆったりできる空間を望む。

・西浦駅の現況としてスーパーや飲食店などの商業施設が少ない。

4.提案

以下の西浦の待合所を提案する。

シンボリックな急勾配の屋根 →→ 周辺の住宅や北側に見える山々と繋がる急勾配とする。周辺との一体感を生みながらも象徴的な形とする。

マルシェのできる広場 →→ 多くの店舗から地域の特産品や暮らしが集まる。人々の繋がりを生む広場となる。

フリーライブラリーのある待合所 →→ 地域の人々が、読み終わった古本を新しい読み手へ寄贈する。このサイクルの中で、地域の交流を促す。

⑤技術的知識

スケッチアップの使い方を学び、平面形からだけでなく3Dを使った多方な視点から建物を見つめる。内部空間の使い方や、色んな視点からの建物の見え方を解釈することで、研究を深める。

⑥これからの取り組み

今回の研究では、地域の景観に沿いながらもランドマークとなる象徴的な建築の意義について研究した。地域の認知度やまちづくりについて実際にどれほど効果があったのか、具体的に研究を深める必要があったと感じた。今後の取り組みとしては、実例を踏まえてこの建物がどのような意義をもたらすのかについて研究していきたい。

  1. 笹間 聡、松田 泰明 ”良好な景観が地域にもたらす効果” ↩︎

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