①研究の背景

 卒業制作のテーマ「日常」

日常と聞いてすぐに思い浮かべられるのは、私たちの普段の生活です。その普段の生活はいつも「衣食住」を土台として成り立っています。中でも「」は誰にとっても必要不可欠なものです。

私たちに食が欠かせないということは、同時に「食に使う道具」、例えば、スプーンやフォークなどの「カトラリー」も私たちにとってなくてはならないということになります。

一般の家庭やレストランでよく見かけるカトラリーは、大きさや材質などは異なれど、大体どれも上の図のような形をしています。幼児向けスプーン等の中には、持ち手部分が太くて掴みやすくなっているものもありますが、大体どれも口に入れる先端部分から柄がまっすぐに伸びた形状をしています。多くの人にとって、これらのカトラリーを使うのに大きな問題は無いかもしれません。しかしながら、指先に力が入りにくかったり、体が不自由な人にとっては、いわゆる一般的なデザインのカトラリーが使いやすいとは限りません。

一般的なデザインのカトラリーがうまく使用できない人々にも快適に使ってもらえるカトラリーについて考えてみるときに、自助具としてのカトラリーという考え方もあります。

※「自助具」とは、身体の障がいや、体の構造などの理由で、日常生活の中で行う動作に困難をきたしている人の動作を補助する道具のこと。

世の中には、既に自助具としてのカトラリーがいくつも存在します。しかしながら、自助具としてのカトラリーは全くと言っていいほど社会に浸透していないのです。

(⬇️自助具としてのカトラリーの例)

(自助具のお箸と曲がるスプーン、フォーク)

②仮説とねらい

ではなぜ自助具があまり社会に浸透していないのか、それは身近ではないからかもしれません。実際、50人にアンケートを取ったところ、95%の人が自助具を知らないと答えました。自助具は普通のスプーンやフォークよりも大きく、形も大分特殊です。一般的なカトラリーと自助具としてのカトラリーには大きな隔たりがあると感じます。

そこで私はもし普通の道具と自助具の境界線を無くしたら

もっと自助具が世の中に浸透し

自助具を必要としている人に優しい世界になるのではないかと考えました。

③研究内容

今回はカトラリーの中でも、スプーンとフォークに絞って研究を進めることにしました。

まず、デザインの出発点として、次の2つのコンセプトが思いうかびました。一つは、一般的なデザインのカトラリーでありながら、自助具としても使用出来るような形に変形できる、トランスフォーマーのようなイメージの製品を提案すること。そしてもう一つは、一般的なデザインと自助具としてのデザインを融合した、ユニバーサルデザインの製品を提案することです。

どちらのコンセプトで行くのか、結論が出せないままデザインを考えるのはすごく難航しました。いま世の中に自助具として存在するものと同じ形では自助具としてのカトラリーを研究する意味が無いので、三ヶ月ぐらいずっとどのような形状にのデザインに新しい自助具の可能性が見いだせるのか悩んでいました。そんな中で、ある日プラスチックのスプーンをハサミで切っていた時に、ハサミが結構持ちやすい形をしている事に気がつきました。そこで、ハサミの持ち手とスプーンをくっつけてみたら、何か新しい発見があるのではないかと思いつき、このアイデアで試作品をつくってみようと思いました。

(試作品 ⬇️)

ハサミのような形の持ち手によって色々な持ち方ができます

④技術的知識

・素材は木材かプラスチックか金属

(今の時点では金属の予定)

➥金属疲労によって起こる課題を解決したい

・ユニバーサルデザインの七原則に則ったデザイン実現のため、単純かつ自由度の高さを意識。

➥スプーンやフォークの部分が曲がるようにする

⑤これからの取組

 〇デザインの考案

・持ち手の太さや形を使いやすいようにデザインの考案(⬇️試作品達)

持たせたい機能と安全性のバランス

・実際にターゲットに使ってもらいたい

 〇制作方法

・木材を削って形にする

・プラスチックを加工して形にする

・樹脂粘土で形を作る

・金属版を切り出して加工する

・針金を編んで強度と柔軟性を持ったスプーンを作る

制作方法は現在検討中

⑥まとめ

普通のカトラリーと自助具がうまく融合し、それが普及する。

日常的に自助具が必要な人と、自助具を必要としない人との境界線がなくなる。

そうなることで手がうまく動かない人や握る力が弱い人が何不自由なく過ごすことが出来る社会に近づいていくことができると思います

誰にとっても過ごしやすい社会の実現に近づいていくために、これからもより良いデザインを検討して行こうと思います。

D332 宮野純大朗