①研究の背景
コロナ禍で多くの人がマスクをしている中、使い捨てのマスクゴミが増えてきている。マスクが河川や海に流されることによって、そこに住む生物たちに悪影響を及ぼしている。
②仮説とねらい
使用済みマスクを滅菌し、他のものとして再利用することができれば、マスクゴミが減るのではないか?
マスクの素材である不織布は、ポリプロピレンでできているので、その性質を利用して他のものにしていく。
③研究内容 1
まず、滅菌するにあたりどの方法が適しているのか、寒天培地を使って、菌の繁殖具合を観察する。
※滅菌とは菌を完全に無くすことだが、できないことが分かったので、除菌できるかを観察していく。
サンプル
A.使用後のマスク
B.新品のマスク
C.水洗いのマスク
D.アルコール除菌したマスク
E.煮沸消毒したマスク
F.空気中に30分さらした培地
結果:どの除菌方法でも除菌ができた。
観察方法:コロニーの数を数える。
A〜Fを4枚ずつ用意し、A1,A2,A3,A4のようにそれぞれ表す。
A | B | C | D | E | F | |
1 | 1 | 1 | 100以上 | 1 | 0 | 11 |
2 | × | 0 | 74 | 0 | 0 | 16 |
3 | × | 0 | 48 | × | 1 | 11 |
4 | 8 | 0 | 23 | 1 | 1 | 18 |
結果:Bの新品を基準と比べた時、
Eの煮沸消毒が1番適していることが分かった。
Cの水洗いは適していない。
※Aの使用後にあまり菌がついていないのは、使用してから溜めている間に菌がなくなった可能性があるため。
今回はYM寒天培地を使って、除菌できているかを確認した。
YM寒天培地とは、寒天に酵母エキスや麦芽エキスを混ぜ、菌を付着させることで、繁殖し確認できるもの。
Y・・・酵母エキス
M・・・麦芽エキス
研究内容 2
除菌できることが分かったので、マスクを何に再利用するかを考える。
不織布マスクの原料:ポリプロピレン
ポリプロピレンの性質から保温性があるという点に着目し、それを利用する。
実験:不織布マスクと市販の防寒シートの保温性を比較する。
①ビーカーに100ml水を入れる。
②80℃まで加熱する。
③放置して1分ごとに何℃下がったか、計測する。
min\℃ | 市販のシート | マスク有り |
0 | 80.0 | 80.0 |
1 | 78.0 | 78.2 |
2 | 76.5 | 77.0 |
3 | 75.0 | 76.0 |
4 | 74.8 | 74.8 |
5 | 72.3 | 73.5 |
6 | 71.5 | 72.3 |
7 | 70.3 | 71.0 |
8 | 69.5 | 70.2 |
9 | 68.5 | 69.3 |
10 | 67.8 | 68.2 |
11 | 67.0 | 67.5 |
12 | 66.2 | 67.0 |
13 | 65.5 | 66.0 |
14 | 64.7 | 65.0 |
15 | 64.0 | 64.4 |
16 | 63.3 | 63.5 |
17 | 62.8 | 63.0 |
18 | 62.0 | 62.0 |
19 | 61.4 | 61.6 |
20 | 60.8 | 61.0 |
結果:マスクは市販のシート同様の保温性があることが分かった。
このことから、マスクをつなげて大きな保温シートとして再利用しようと考えた。
マスクの繋げ方として、ポリプロピレンは熱可塑性樹脂なのでそれを利用して、アイロンやはんだごてで接続部分を溶かしてくっつける。
※アイロンでも良いがはんだごての方が正確に溶かせる。
熱可塑性樹脂:温度が高くなると溶けて溶融し、冷やすと固化する。
④結果
使い捨てのマスクを再利用して、保温シートにすることができた。保温シートにマスクの枚数は決まってないので、毎日捨てずにある程度溜まったら、製作することでゴミを減らすことができ、保温シートとしても再利用することができる。
⑤考察
シートの強度を上げるために2枚重ねて製作したり、熱可塑性樹脂の性質を利用して、接着部分をもっと硬くすることが必要だと思う。
このシートを作るために手間や時間を取ってしまうのは少し難点である。
今回保温性に着目したが、ポリプロピレンは他にも耐水性や絶縁性などの性質もあるため、シート以外にも再利用する方法はあると思う。